2024-09-10

2024年の保険市場動向をまとめた「2024年保険モニタリングレポート」を見やすく説明しながら、1年間保険市場の変動/状況を説明していきます。今回は損害保険から生命、少額保険まで幅広く扱っていきます。

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目次

はじめに

金融庁が公表した「2024年保険モニタリングレポート」は、日本の保険業界が直面する最新の課題と動向を明らかにしています。少子高齢化、自然災害の増加、デジタル化の進展など、激変する環境の中で、保険会社はどのように対応し、進化しようとしているのでしょうか。本記事では、このレポートの主要ポイントを詳細に解説し、保険業界の現状と今後の展望について考察します。保険契約者、業界関係者、そして投資家の皆様にとって、今後の保険業界の方向性を理解する上で重要な情報源となるでしょう。

保険市場の概況

日本の保険市場は、以下のように構成されています:

  • 生命保険会社:41社
  • 損害保険会社:57社
  • 少額短期保険業者:122社

【表1: 日本の保険市場の構成】

生命保険市場は大手グループが市場の大部分を占めているため、競争が激化しにくい一方、各社の収益性維持のための戦略的な商品開発が求められています。損害保険市場も同様に寡占状態にあり、特に自然災害リスクに対する対応が今後の課題として挙げられます。

収益構造の分析

  • 生命保険:生命保険会社の利益の多くは、保有契約から得られる死差損益に依存しています。予定利率による「逆ざや」は過去に大きな問題となっていましたが、近年では予定利率の低下や契約内容の見直しにより、逆ざやの減少が見られます。今後は、予定利率の引き上げや商品開発の多様化が求められています。
  • 損害保険:損害保険会社では、火災保険での損失が続く一方で、自動車保険や傷害保険などの他の保険種目での利益が全体の利益を支えています。2022年度の損害保険全体の利益率は1.6%にとどまっており、さらなる利益改善が必要です。

【表2: 保険種目別の収益構造】

2023年度業績ハイライト

  • 生命保険:2023年度は、新型コロナ関連の給付金支払が減少したことが増益の要因となり、基礎利益の増加が見られました。今後も、健康増進型商品の拡充や新たなチャネルでの販売強化が期待されています。
  • 損害保険:損害保険各社では、政策株式の売却益が増加し、また海外事業の好調が増益に寄与しました。特に、東南アジア市場への進出や現地でのデジタル保険サービスの展開が、今後の成長のカギとなります。

自然災害への対応

能登半島地震(2024年1月1日発生)の影響と対応

  • 地震保険金支払額:約910億円(2024年5月31日時点)。これは、過去の大規模地震の支払額として6番目の規模です。
  • 事故受付件数:150,567件
  • 調査完了率:96.9%(145,899件)
  • 支払完了率:68.7%(103,439件)

【表3: 能登半島地震に対する対応】

損害保険各社は、災害発生時の迅速な対応を重視し、立会調査や共同調査を通じて、保険金支払のスピードアップを図っています。また、自然災害への対応力を強化するための新たな技術導入も進んでいます。

新たな取り組み

  • テレマティクス自動車保険データの活用:テレマティクス技術により収集された自動車走行データを活用し、道路被害の可視化や一般公開が行われています。これにより、被災地の迅速な復旧支援や予防措置の向上が期待されています。
  • インデックス保険の活用:2024年3月31日時点で約100件の支払いが完了。家計向けは1~10万円の小口補償、企業向けは百万円から億円規模の補償が提供されており、特に企業向けの需要が高まっています。

ビジネスモデルの動向

生命保険会社の主要販売チャネル別特徴と取り組み

  • 営業職員チャネル:従来型の営業職員チャネルは引き続き主力ですが、営業職員のデジタル化支援が進んでいます。オンラインでの顧客対応やデジタルツールの活用により、営業効率の向上が図られています。
  • 乗合代理店:複数の保険会社の商品を取り扱う代理店では、医療保険やがん保険など、第三分野商品の販売競争が激化しています。代理店との連携を強化し、顧客ニーズに即した提案力を高めることが求められています。
  • 銀行窓販チャネル:銀行窓販では、外貨建て保険の販売が増加傾向にあります。急激な円安や金利上昇により、投資ニーズに応じた保険商品が注目されています。

損害保険会社の主な課題と対応

  • 自然災害リスクへの対応強化:損害保険会社では、再保険の戦略的活用や異常危険準備金の積立強化に加え、キャットボンドの発行を通じてリスク分散を図っています。
  • 防災・減災・早期復旧サービスの拡充:損害保険会社は、防災・減災対策の一環として、リアルタイム災害情報サービスやAI・ドローンを活用した損害調査の効率化を進めています。

【表4: 損害保険会社の主な取り組み】

取り組み内容詳細説明再保険の戦略的活用上層レイヤーのカバー買い増し、下層レイヤーの縮小防災・減災・早期復旧サービスの強化AI・ドローンを活用した損害調査、リアルタイム情報提供

デジタル化の推進

保険業界ではデジタル技術の導入が急速に進んでおり、特に損害サービスプロセスの効率化に注力しています。AIを活用した予兆検知システムの導入により、損害認定のスピードと精度が向上しています。また、オンラインでの顧客対応やリモート査定の導入が進んでおり、保険金支払の迅速化に貢献しています。

財務・リスク管理の主要な取り組みと今後の方向性

  • 経済価値ベースのソルベンシー規制:2025年度に導入予定で、保険会社の財務健全性を強化します。国際資本基準(ICS)との整合性が図られ、国内規制として適切な調整が行われます。
  • サイバーセキュリティ対策の強化:保険業界全体でサイバーセキュリティセルフアセスメント(CSSA)の実施や、業界横断的なサイバーセキュリティ演習が行われています。これにより、デジタル時代のリスクに対応した体制が整備されています。
  • マネーロンダリング対策の強化:グループベースでのリスク評価の統一や、海外拠点を含めた管理態勢の強化が進められています。特に、海上保険における制裁対象国との取引リスクの管理が強化されています。

まとめ

2024年の保険モニタリングレポートは、日本の保険業界が多岐にわたる課題に直面していることを明らかにしています。自然災害リスクの増大、デジタル化の進展、顧客ニーズの多様化など、環境変化への対応が求められます。保険業界全体の健全な発展と、契約者保護の強化に向けた取り組みを継続することが、今後の成長と発展の鍵となります。保険会社には、社会の変化に柔軟に対応し、顧客にとって価値のある商品・サービスを提供し続けることが求められています。

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