2024-06-05

中国経済は、ポストコロナの回復局面に入ったものの、その勢いは弱く、景気の下振れリスクが高まっています。本稿では、足元の中国経済の現状を分析し、景気回復の障害となっている構造的な課題について考察します。

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目次

製造業は低迷、非製造業も勢い欠く

5月の中国の購買担当者景気指数(PMI)は、製造業、非製造業ともに低下しました。特に製造業PMIは3ヶ月ぶりに景況感の節目である50を下回り、新規受注や新規輸出受注が大きく落ち込みました。非製造業PMIは50超を維持しているものの、2ヶ月連続で低下するなど、勢いを欠いています。

一方、1~3月期の実質GDP成長率は前年比+5.3%と、前期から伸び率が上昇しました。業種別では、不動産業の前年割れが続く中、製造業が全体を押し上げる格好となっています。ただし、足元の PMIの動きを見る限り、製造業の先行きは楽観できません。

投資と消費に力強さ欠く、輸出も頭打ち

4月の固定資産投資は、前年比+4.2%と伸び率が鈍化しました。不動産開発投資の減少幅が拡大したほか、インフラ投資の伸びも縮小しています。また、外資系企業による投資も2桁の大幅減が続くなど、投資全般に勢いがありません。

消費についても、4月の小売売上高(名目)が前年比+2.3%と弱い伸びにとどまるなど、力強さを欠いた状態が続いています。自動車販売の低迷に加え、耐久消費財や飲食サービス消費の減速が目立ちます。こうした個人消費の弱さが、景気の足を引っ張る格好となっています。

輸出は4月に前年比プラスに転じたものの、対米輸出などが引き続き低調で、本格的な回復には至っていません。世界的な景気減速を受けて、中国からの輸出も頭打ちの様相を呈しています。

不動産市場の低迷続く、住宅需要喚起策の効果は限定的

中国政府は5月に、住宅ローン金利の引き下げや頭金比率の緩和など、不動産市場の需要喚起策を打ち出しました。しかし、こうした政策の効果は限定的にとどまる見込みです。

消費者の住宅価格の先安観が根強い中で、住宅購入意欲は低下が続いています。価格下落への警戒感から、資産としての住宅の魅力が低下しているのが主因で、金利引き下げ等の需要喚起策では対応しきれません。住宅価格の下落予想を覆すほどの抜本的な政策効果は期待薄と言えそうです。

人民元安、株価低迷で景気下押しリスク

5月の人民元相場は、対ドルで7.24元と約半年ぶりの安値を付けました。米国の利上げ長期化観測を背景としたドル高・人民元安の進行です。人民元安は、輸入価格の上昇を通じたインフレ圧力や、海外からの投資資金流出を招くリスクがあります。

上海総合株価指数も、月後半に大きく値を下げました。米中対立への警戒感に加え、人民元安に伴う資本流出への懸念が株価の下押し要因となっています。人民元安と株安が景気の下振れリスクを高める可能性は小さくありません。

まとめ

中国経済は、ポストコロナの景気回復局面に入ったものの、製造業の低迷や個人消費の弱さが足を引っ張り、力強さを欠いた状態が続いています。不動産市場の需要喚起策など政府の景気下支え策も、抜本的な効果は期待薄です。

加えて、人民元安と株安が資本流出を招くリスクもあり、景気の下振れ懸念は一段と高まっています。中国経済は、構造的な課題を抱えたまま、当面は緩やかな回復が精一杯との見方が妥当でしょう。習近平政権には、バブル崩壊後の経済立て直しに向けた、より踏み込んだ対応が求められています。

*本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。

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