2024-06-05

半導体市場は足元で好況期に入っています。主因は生成AI向け需要の旺盛さですが、生成AI搭載スマホの販売開始を契機に、スマホ向け需要も持ち直しの兆しが見えてきました。一方で、自動車向けや産業機械向けは重石となっています。ここでは半導体市場の現状と株価の先行きについて考察していきます。

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目次

半導体市場をけん引する生成AIブーム

世界半導体売上高は前年比2桁超の高い伸びが継続し、半導体株価指数(SOX指数)も好調に推移しています。けん引役は何と言っても生成AI向けの旺盛な需要です。代表格のエヌビディア社の売上高は3四半期連続で3倍超の驚異的な伸びを示しており、同社製品を製造するTSMC社の売上高も持ち直しつつあります。

ただし、半導体市場全体に占める生成AI向けの割合はまだ4%程度と推計され、現状は生成AI一本足打法の様相を呈しています。生成AI向けの半導体は、主にサーバー向けのハイエンド品で、供給が需要に追い付かない状況が続いています。その結果、価格の高騰が売上高を押し上げる構図となっています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や、ChatGPTに代表される生成AIの登場で、データセンター向けの設備投資は当面旺盛な状況が続くと見られますが、いずれ供給が追い付けば、価格の沈静化が避けられないでしょう。

生成AI搭載スマホの登場で需要回復の兆し

足下では生成AI向けに加えて、スマホ向けの需要にも回復の兆しが見えています。コロナ禍で買い控えられていた買い替え需要の顕在化に加えて、生成AI機能を搭載した新製品の販売開始が盛り返しのきっかけとなっているようです。スマホに搭載される生成AI向け半導体は、サーバー向けのものとは異なりますが、広い意味で言えば、スマホ市場も生成AIブームの恩恵を受け始めたと言えるでしょう。

一方、自動車向けは電気自動車(EV)の販売鈍化などから在庫調整局面に入っており、産業機械向けも中国での国産化シフトなどを背景に低調に推移しています。この2分野は合計で半導体市場の約3割を占めるため、足を引っ張る要因として無視できません。特に、世界的なEV販売の鈍化は、車載半導体市場に大きな影を落としています。補助金頼みの販売構造が続く中、需要の本格的な回復にはまだ時間がかかりそうです。また、産業用ロボットや工作機械向けの需要も、世界的な設備投資の減速を受けて弱含んでいます。

台湾企業の在庫調整進展が業況改善を示唆

需給が混在する半導体市場ですが、先行指標となる台湾の統計からは、今後の業況改善が期待されます。電子部品や半導体の一大生産地である台湾では、在庫の積み上がりが昨年後半から大きな課題となっていました。しかし、足元では在庫調整が進展し、出荷と在庫のバランスが改善しつつあります。それを受けて、台湾の電子部品業PMIは昨年後半を底に上昇傾向を辿っています。

過去の推移を見ると、世界半導体売上高は台湾のPMIに4ヵ月程度遅行する傾向があります。今回も同様のパターンを辿るとすれば、世界半導体売上高は当面、前年比2桁近くの高い伸びを維持すると予想されます。ただし、台湾企業の業況は、生成AI向けとそれ以外の需要でばらつきが大きいと見られ、一部の企業への恩恵に偏る公算が大きいです。

株価は物色傾向の変化に要注意

半導体株価(SOX指数)は、生成AIブームへの期待から市場の期待を表すPER(株価収益率)が大きく押し上げられた結果、過去最高値を更新しました。半導体市場の拡大期待を受けて、投資家のリスク選好が強まっていると言えます。

ただし、PERの上昇が先行し過ぎた感は否めません。米国の実質長期金利との乖離も大きく、PERのさらなる上昇は想定しづらい情勢です。仮に生成AIブームが一巡すれば、PERは大幅な低下を余儀なくされるかもしれません。

とはいえ、半導体市場の拡大を背景に、半導体各社の売上高は今後も高い伸びが期待されます。市場予想の売上高伸び率から試算すると、EPS(1株当たり利益)は今後も堅調に推移すると見込まれます。PERの上昇余地は乏しいものの、EPSの押し上げを背景に、株価は高値圏を維持する展開が想定されます。

ただし、足下の株価上昇は生成AI関連企業への物色が大きく寄与しているため、半導体市場全体への恩恵は限定的と言えます。今後は「生成AIなら何でも良い」とばかりに買われた銘柄から、徐々に選別が進む可能性が高いでしょう。業績寄与度の低い銘柄は物色の対象から外れ、調整色を強めるリスクがあります。

まとめ

半導体市場は、生成AI向け需要の拡大を主因に好況期に入りました。加えて、生成AI搭載スマホの販売も需要を下支えしています。一部の分野では調整局面も見られますが、当面は全体として高い成長が見込まれます。株価は物色傾向の変化には要注意ながら、売上高の拡大を背景に高値圏を維持すると予想されます。

ただし、現状の半導体ブームは、特定分野の需給ひっ迫による一時的な現象である可能性は払拭できません。一時のメモリ市場のように、供給の増加とともに需給が緩和し、業績の拡大が頭打ちになるリスクは無視できません。

加えて、世界的なインフレ圧力の強まりを受けて、主要中央銀行が継続的な金融引き締めを進めており、景気の下振れリスクも高まっています。半導体市場も決して景気の影響を免れるわけではありません。中長期的な視点を持ちつつ、マクロ環境の変化にも目配りしながら、半導体市場の動向をウォッチしていく必要がありそうです。

*本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。

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