東南アジアの経済は、世界経済の中で重要性を増しています。特に、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムからなるASEAN5は、その成長の中心として注目を集めています。2023年、これらの国々は外需の減速という課題に直面しましたが、内需の底堅さにより経済を支えることができました。2024年を迎え、ASEAN5経済はどのような展望を持っているのでしょうか。本記事では、2023年の振り返りと2024年の見通しを詳細に分析し、ASEAN5経済の今後の方向性を探ります。
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ASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の経済は、2023年に外需の減速に直面しましたが、2024年はより明るい展望が期待されています。今回は、2023年の振り返りと2024年の見通しについて詳しく見ていきましょう。
2023年:外需減速も内需が下支え
2023年、ASEAN5はいくつかの逆風に直面しました:
- 半導体需要の低迷
- 中国経済の減速
- 米国での低価格財消費の落ち込み
これらの要因により、すべての国でコロナ禍前5年平均を下回る成長率となりました。特にマレーシアでは、GDPにおける輸出のシェアが大きいこともあり、輸出の寄与度が前年比▲6%ptと大きく落ち込みました。
しかし、内需は底堅く推移しました。その要因として:
- 雇用環境の改善:2023年末までにすべての国でコロナ禍前の水準まで回復
- インフレの落ち着き:2023年1月までにピークアウト
- 海外送金の堅調な流入:民間消費を下支え
- 大規模な公共投資:特にフィリピンのマルコス政権やインドネシアで積極的に実施
が挙げられます。
これらの要因により、外需の減速が輸出産業の業績悪化を通じて雇用環境を悪化させ、さらに民間消費が落ち込むという悪循環を回避することができました。一方で、タイでは2023年の総選挙後に政治の空白が続き、公共投資の実施が大幅に遅れるなど、国ごとに異なる状況も見られました。
2024年:外需の回復と内需の堅調さに期待
2024年は、中国経済の減速が懸念材料となるものの、全体的に外需が徐々に持ち直すと予想されています。その理由として:
- 米国の「中国外し」によるASEANからの対米輸出増加
- ベトナム、マレーシア、タイの対米輸出指数は2023年にV字回復
- サプライチェーン再編に関連した電子機器輸出の増加
- 世界的な半導体需要の回復
- 世界半導体市場統計(WSTS)は2024年の世界の半導体市場が前年比+13.1%と再拡大すると予測
- マレーシアなど半導体生産拠点が集積する国への恩恵が大きい
- 脱炭素関連輸出の増加
- インドネシアでは2023年央以降、電気自動車(EV)のバッテリーに使われるニッケル加工品の対中輸出が増加
- 中国のEV生産政策を背景に、今後も堅調な伸びが期待される
内需も引き続き堅調と見込まれ、以下の要因が追い風となりそうです:
- 物価の安定と利下げ
- 2024年1月までにすべての国でインフレ目標の上限を下回る
- 米国の利下げを受けて、ASEAN5でも2024年央以降に利下げを開始(再開)する国が増加する見込み
- 消費マインドの回復に寄与し、年後半から年末にかけて民間消費の回復が加速すると予想
- 旺盛な海外送金流入
- 世界銀行の予測では、中国を除く東アジア・太平洋地域への海外送金は2024年に前年比+5.0%と、世界平均(同+3.1%)を上回る見通し
- 特にフィリピンでは、海外送金流入がGDPの9%を占め、内需を支える重要な要因となる
また、2023年のASEANへの新規直接投資(グリーンフィールド投資)は前年比+36.5%と大きく増加しており、自動車や電子機器、縫製など、グローバルバリューチェーンに依存したセクターへの投資が目立ちました。2024年も、こうした投資を背景に、ASEANからの輸出に弾みがつくことが期待されます。
リスク要因にも注意
ただし、以下のリスク要因にも注意が必要です:
- 米国による中国への過度な規制強化とその波及効果
- 中国企業のASEANを経由した「迂回輸出」に対する規制の可能性
- 米大統領選挙でのトランプ氏再選による対中政策強化のリスク
- 米国経済のリセッションリスク
- ASEANからの輸出回復シナリオの崩壊の可能性
- リスクオフによるASEAN5からの資本逃避リスク
これらのリスクが顕在化すると、ASEAN5の経済回復シナリオが崩れる可能性があります。
各国の個別事情
ASEAN5の中でも、国ごとに異なる要因や課題が存在します:
- タイ:大規模な景気刺激策の効果により、潜在成長率を上回る成長が期待できる可能性があります。
- マレーシア:2024年7月以降の燃油補助金制度の改定、サービス税の引き上げ、奢侈税の導入により、インフレ圧力が高まる可能性があります。政府は、これらの一時的なインフレ要因の影響を金融緩和でいかに下支えできるかが課題となるでしょう。
- フィリピン:海外送金流入がGDPの9%を占めており、好調な海外送金が内需を支える重要な要因となります。
- インドネシア:ニッケル加工品の対中輸出増加が期待される一方で、2024年の大統領選挙を控えた政策運営に注目が集まります。
- ベトナム:米国の「中国外し」の恩恵を受ける一方で、「迂回輸出」に対する米国の警戒も強まっており、バランスの取れた対応が求められます。
まとめ
2024年のASEAN5経済は、外需の緩やかな回復と底堅い内需に支えられ、2023年から若干加速すると予想されます。各国政府には、適切な政策運営を通じて内需を下支えしつつ、リスクにも備えていくことが求められるでしょう。
ASEAN5の持続可能な発展には、外需と内需のバランスを取りつつ、グローバルな経済環境の変化に柔軟に対応していく必要があります。2024年、ASEAN5がこれらの課題をどのように乗り越え、さらなる成長を遂げていくのか、注目していきましょう。
*本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。
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