2024-10-09

デジタル化が進む現代社会において、サイバーセキュリティの重要性は日々高まっています。それに伴い、サイバー保険市場も急速に成長しています。本記事では、保険ブローカーのマーシュが発表した最新の報告書を基に、北米におけるサイバー保険の動向、特にサイバー攻撃の傾向と保険金請求の状況について詳しく見ていきます。また、企業が直面する課題や、保険業界の対応についても掘り下げて解説します。

クレジットヒルズは、企業の与信リスクマネジメントを強力にサポートする取引信用保険の専門ブローカーです。

ビジネス成長のパートナーとして、企業ごとのニーズに最適な保険プランを提案し、リスク管理を徹底的にサポートします。保険会社との交渉力を駆使して、有利な条件を引き出すことでお客様の利益を最大化。国内外問わず、取引リスクを見逃さない万全の体制で、安心と信頼のビジネス環境を実現します。

目次

サイバー事故の発生状況

マーシュの報告書によると、2023年に北米でサイバー事故が発生した契約の割合は21%で、ここ数年は20%前後で推移しています。この数字は、サイバーリスクが依然として高い水準にあることを示しています。

この数値の推移から、企業のサイバーセキュリティ対策が一定の効果を上げている一方で、サイバー攻撃の手法も進化し続けていることがうかがえます。特に2023年の微増は、新たな脅威の出現や攻撃の高度化を示唆している可能性があります。

業界別のサイバー攻撃傾向

2023年におけるサイバー事故の保険金請求件数を業界別に見ると、以下のような傾向が見られます:

この傾向は、過去数年間大きな変化がないとされています。各業界が標的となる理由は以下のように分析できます:

  • 医療機関: 患者の個人情報や医療データの高い価値
  • 通信業: 大量の個人情報と重要なインフラストラクチャーの管理
  • 教育機関: セキュリティ対策が比較的脆弱で、研究データの価値が高い
  • 小売・卸売業: 顧客の支払い情報や個人情報の取り扱い
  • 金融機関: 金融データへの直接的なアクセスの可能性

これらの業界は、特に強固なサイバーセキュリティ対策と、包括的なサイバー保険カバーが必要とされています。

ランサムウェア攻撃の動向

ランサムウェア攻撃は、サイバー犯罪の中でも特に注目される脅威です。2023年の動向には、いくつかの注目すべき点があります。

3.1 攻撃件数の増加

ランサムウェア事案の件数は、2022年の172件から2023年には282件へと急増しています。この64%の増加は、サイバー犯罪者がランサムウェア攻撃を依然として有効な手段と考えていることを示しています。

3.2 身代金支払い率の低下

興味深いことに、実際に身代金を支払った企業の割合は大幅に減少しています:

この低下傾向は、以下の要因が考えられます:

  1. 企業のサイバーセキュリティ対策の向上
  2. バックアップシステムの改善
  3. 法執行機関との協力強化
  4. 身代金支払いに対する規制や保険会社の方針変更

3.3 身代金額の高騰

一方で、身代金の要求額と実際の支払額は急激に上昇しています:

この驚異的な増加は、サイバー犯罪者が「質」を重視する戦略に移行していることを示唆しています。攻撃の成功率は低下しているものの、成功した場合の利益は大幅に増加しているのです。

サイバー保険市場への影響

これらの動向は、サイバー保険市場に以下のような影響を与えています:

  1. 保険料の上昇: サイバーリスクの増大と高額化する保険金支払いにより、保険料が上昇傾向にあります。一部の報告では、2023年の保険料は前年比で20%以上上昇したとされています。
  2. 引受基準の厳格化: 保険会社は、契約企業のサイバーセキュリティ対策をより厳密に評価するようになっています。多要素認証の導入や定期的なセキュリティ監査の実施など、具体的な対策の有無が保険引受の条件となるケースが増えています。
  3. 補償内容の見直し: ランサムウェア攻撃に対する補償条件の変更や、新たなサイバーリスクに対応する補償の追加などが行われています。例えば、一部の保険会社は身代金支払いに対する補償を制限または除外する動きを見せています。
  4. リスク管理サービスの拡充: 保険会社は、契約企業のサイバーリスク低減を支援するサービスを強化しています。これには、リアルタイムの脅威インテリジェンス提供、インシデント対応訓練、脆弱性診断などが含まれます。
  5. サブリミットの導入: 特定のリスク(例:ランサムウェア攻撃)に対して、主契約の保険金額とは別に、より低い支払限度額(サブリミット)を設定する保険商品が増えています。

企業に求められる対応

マーシュの報告書は、企業に対して以下のような対応を推奨しています:

  1. 包括的なサイバーレジリエンス戦略の構築:
    • サイバーリスクを企業全体の問題として捉える
    • 財務・業務への影響を含めた総合的な戦略を立てる
    • 経営層の関与を強化し、サイバーセキュリティをビジネス戦略の一部として位置付ける
  2. シナリオ演習の実施:
    • 様々なサイバー攻撃のシナリオを想定し、対応を演習する
    • 特にランサムウェア攻撃への対応プランを策定し、定期的に見直す
    • 従業員全体のセキュリティ意識向上のための訓練を実施する
  3. セキュリティ投資の継続:
    • 効果的なサイバーセキュリティ管理への投資を継続する
    • 最新の脅威情報に基づいてセキュリティ対策を常に更新する
    • AIや機械学習を活用した先進的なセキュリティソリューションの導入を検討する
  4. 保険との適切な組み合わせ:
    • サイバー保険を活用しつつ、自社のリスク管理能力も高める
    • 保険の補償内容を定期的に見直し、新たなリスクに対応できているか確認する
    • 保険会社が提供するリスク管理サービスを積極的に活用する
  5. サプライチェーンセキュリティの強化:
    • 取引先や委託先のセキュリティ状況を評価し、必要に応じて改善を要求する
    • サードパーティリスク管理のプロセスを確立し、定期的に見直す
  6. データバックアップと復旧計画の最適化:
    • 重要データの定期的なバックアップを実施し、オフラインでも保管する
    • ランサムウェア攻撃を想定した復旧計画を策定し、定期的にテストする

まとめ

北米のサイバー保険市場は、増加し続けるサイバー攻撃と、それに対する企業や保険会社の対応の進化により、常に変化しています。特にランサムウェア攻撃は、その頻度や潜在的な重大性から、依然として最大の懸念事項となっています。

企業は、サイバーセキュリティへの投資を継続しつつ、サイバー保険を効果的に活用することで、総合的なサイバーリスク管理を行うことが求められます。また保険会社も、変化するリスク環境に適応し、より効果的な保険商品とリスク管理サービスの提供を進めていく必要があるでしょう。

サイバーリスクは今後も企業にとって重大な脅威であり続けると予想されます。継続的な対策の見直しと改善が、この動的なリスク環境を生き抜くための鍵となるでしょう。企業、保険会社、そして規制当局が協力して、より安全なデジタル環境の構築に取り組むことが、今後ますます重要になっていくと考えられます。

与信リスク対策における保険ブローカーの役割

与信リスク管理は多くの企業にとって重要な課題です。保険ブローカーは、与信リスク対策において以下のような役割を果たします:

  1. リスク分析: 取引先の信用状況や市場動向の分析
  2. 最適な保険選択: 取引信用保険など、適切な保険商品の選定と提案
  3. カスタマイズされたソリューション: 企業の取引構造に合わせた保険設計
  4. クレーム対応: 債権回収不能時の迅速な保険金請求サポート
  5. リスク管理アドバイス: 与信管理体制の構築支援

クレジットヒルズは、与信リスクに特化した保険ブローカーとして、お客様のビジネスを強力にサポートいたします。取引信用保険や資金調達サービスに関するご相談は、ぜひお問い合わせください。

専門性と独立性を活かし、お客様に最適な与信リスク管理ソリューションを提供いたします。