与信管理とは

「与信管理」は、商取引における「信用リスク」を管理するための業務です。その根本にある「与信」とは、「信用を与える」ことを指し、商品やサービスの代金を一定期間後に支払う掛売りの形を取ることが一般的です。この掛売りは、取引先に時間的な資金調達の余裕を提供し、購入決定を促進し、取引をスムーズに進めます。

しかし、企業間の取引の中には取引先の倒産、経済事情悪化などによって、支払い期限までに売掛債権を回収できないリスクも存在してます。これが「信用リスク」であり、与信管理の主な対象となります。企業を取り巻く様々なリスクの中で信用リスクは企業の運営、存続に直結する大きなリスクとして近年注目されています。

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与信管理の重要性

債権回収ができなかった場合、その損失により、業績へのマイナスな影響を及ぼします。また、その損失をカバーするためには、膨大な売上がさらに必要になります。

仮に、会社の売上高経常利益が2.5％で、250万円の売掛債務が回収できなくなった場合、この不良債権をカバーするためには250万円 ÷ 2.5％ = 1億円の売上が必要になります。つまり、不良債権額を売上高経常利益率（経常利益/総売上高）で割った結果が、不良債権のカバーに必要な売上高といえます。

業績面だけでなく、不良債権の発生後には様々な処理業務が発生します。担当している部署や営業担当者は回収や後始末に奔走し、財務・経理部門は突発的な経理処理や得られるはずだった資金がなくなったことによる資金の組み立てや調達に追われます。後ろ向きな業務に忙殺されることで、精神的な負担感を覚えることもあります。さらに、資金繰りが厳しい状態に陥れば、給与や賞与の削減をせざるを得ないことも考えられます。仕入先への支払いが滞ることで対外的な信頼が失墜するリスクもあります。

不良債権の発生は、営業担当者だけでなく、様々な部門にネガティブな影響を及ぼすことを理解し、与信管理がいかに重要であるかを認識することが大切です。

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与信管理の手法

（１）営業担当者の視点活用

企業の経営状態悪化の前兆を見逃さないためには、営業担当者の視点を活用することが極めて重要です。営業担当者は、取引先と最も密接に接しており、定期的なコミュニケーションを通じて微妙な変化を感じ取ることができます。明確な変化だけでなく、感覚的な変化もキャッチすることが可能です。営業担当者は、添付のチェックシートを参考にして、対象企業を多面的な観点から観察し、その観察力を高めることが求められます。

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出典：帝国データバンク

（２）第三者の活用

より確実な与信管理を行うためには、定期的に第三者の視点を取り入れ、客観的な判断を行うことが不可欠です。

取引信用保険や債権保証サービス、ファクタリングなどの金融サービスを利用することで、債権リスクを第三者に転嫁し、貸倒れに対する保全を図ることができます。これらの手法は、取引先を変更することなく、リスクを軽減する有効な手段です。

また、信用調査会社を活用することも重要です。信用調査会社から得られる最新のレポートには、客観的な情報だけでなく、主観的な評価も含まれており、信用状態を判断するための指標が提供されます。これにより、与信管理において客観性と効率性を高めることができます。

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まとめ

与信管理は、企業が取引相手を選定し、取引を行う際に欠かせない重要な部分です。この業務は、企業の経営状態や信用力を把握し、不良債権を抑制するための守りの役割とともに、新規顧客の獲得や取引拡大を通じて業容の拡大に貢献する攻めの要素を兼ね備えています。

守りの効果として、与信管理は厳しい経営状態にある企業を見極め、不良債権の発生を抑制することができます。これにより、売掛債権の順調な回収が促進され、企業の資金繰りが円滑に行われることが保証されます。

一方、攻めの効果としては、与信管理は経営状態の安定している企業や好調な業績を持つ企業を特定し、新規取引の営業活動や既存取引先との取引額の拡大を通じて業容の拡大を図ることができます。経営の安定を維持しながらも、市場の動向や競合状況に対応するための新規顧客開拓で与信管理は判断基準として役割を果たします。

経営を安定させるためには、商取引を慎重に判断し、資金繰りを管理することが不可欠です。また、既存の市場だけでなく、新規顧客や事業分野を積極的に開拓することにより企業の資金状態を改善することも必要です。豊富な情報と分析を基盤に安定的な企業運営のために与信管理は欠かせない非常に重要な業務です。

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